といっても、日本のみなさんには、おわかりじゃないでしょう。
二十四節気というのがあって、これは日本にも伝わってきました。
だんだんすたれて、現役で話題になるのは、
立春、春分、夏至、立秋、秋分、冬至、大寒くらいのものでしょうか。
ああ、啓蟄もありますね。
中国では、清明節はとても意味があります。
ことしは、4日から6日まで連休です。
気温があがり、水ぬるむ時期、わくわくしますね。
みなさんには楽しいときであっても、
林業や緑化の関係者にとっては、頭の痛い時期です。
3月27日夜、大同事務所の武春珍所長は、南天門自然植物園の李向東に電話をかけ、
「ほかの仕事はしなくていいから、もっぱら防火に努めてほしい」と話していました。
春のこの時期、この地方ではほとんど雨が降りません。
去年の秋から、ほとんどないのです。
気温があがります。
そして、風がつよい。
極端に乾燥していますね。
清明節は、中国では墓参りのときです。
お墓に生えた草をとり、盛り土をあらためます。
そして、火をつかうのです。
昼食をすませて、ホテルに帰る途中、くるまを停めてもらいました。
市場の片隅で売られている紙銭の写真を撮りたかったのです。
天地銀行、天堂銀行、冥都銀行などが発行するお札で、
中国の紙幣をまねたデザイン。
日本のおもちゃ銀行券のようなものです。
毛沢東の肖像のかわりに、ふつうは冥国の皇帝の絵がはいっています。
ところが今回みたものには、毛沢東の肖像入りも、たくさんありました。
額面はみな大きくて、50億元が最高でした。
あちらの世界もインフレなのでしょう。
めずらしかったのは、米ドルをまねた紙銭で、ちゃんとグリーンバックス。
額面は、1000美元、5000美元、10000美元。
美国はアメリカのことで、美元はUSドルです。
日本の札はありませんでした。
いまの両国関係を反映したのか、円安がきらわれたのか?
これを墓前で焼いて、煙にして、ご先祖さまに届けるのです。
焼いている現場をみたことはありませんが、
灰がぶあつく残っているのをみました。
かなり大量に燃やすのかもしれません。
その火が風で飛んで、山火事になりやすいのです。
山の入口に、「上墳厳禁焼紙」
(墓参りで紙銭を焼くことを厳禁する)の横断幕をみますし、
何人もの見張りが立っているのを、今回もみました。
大同県のさる鎮の共産党書記に、以前に話したことがあります。
「ねえ、つぎのような宣伝をしてよ。
ご先祖さまのところの組織から、共産党に連絡がきたので、
みなさんに伝える。
冥界も、下界といっしょで、経済が大発展し、
お金に困らなくなった。
だから、もう、お金は送ってこなくていい。
ところが、これも下界といっしょで、水不足が深刻だ。
これから墓参りには、お金ではなく、水をもってきてほしい」
若い党書記は、私の話を最後まできいてくれたんですけど、
返事は、「そんなことは私にもできない」というものでした。
う〜ん。
JICA主催の、林業関係者対象の研修会に招かれたとき、
いまの話を、講演のなかにいれたんですよ。
そしたら、墓参りには水をもってきてほしい、というくだりで、
熱烈な拍手があったんですね。
林業関係者にとって、どんなに深刻であるかがわかります。
そして、清明節が連休になったことに、
「こんなバカなことを、だれが決めたんだ!」という憤りの声もききました。
都会にでている人間まで帰ってきて、墓参りをする、というのです。
以前は、燃えるものは、なにもなかったのです。
ところがいまは、営々たる努力によって、山に木が戻ってきました。
10年、20年、それ以上かけて育てた森林が、
一瞬にして、灰になりかねないのです。
3月30日、31日と、南天門自然植物園にいきました。
中国林業科学研究院の陳幸良副院長と、北京林業大学の2人の教授を
案内したのです。
前中久行代表、桜井尚武顧問がここの活動を紹介しました。
それについては、べつに書きます。
周金の勇姿がすごかった。
迷彩服に、濃いオレンジのベストをつけ、村から支給された迷彩ヘルメット。
「防火巡査」の腕章。
バイクには、消火器が搭載されています。
敷地内だけでなく、近くの村にたくさんの横断幕を張っています。
「墓参りで紙銭を燃やすのを厳禁する」のほか、
「火をだしたら、牢屋行きだぞ!」という刺激的なものも。
大同市は、清明節期間の野外での火の使用を厳禁し、
違反者は厳罰に処する、とくりかえし発表しています。
しかし、ここの植物園は民間団体。
どうしても燃やす、という人がきたとき、追い返すことはできません。
そこで、トタンでバケツのような容器を3つつくり、
そのなかで燃やさせるといっています。
無事にすぎてほしいものです。